採点に欠かせないDOSSってなに?
DOSS(D1オリジナルスコアリングシステムの略称でドスと読みます)は、D1グランプリのファンならすでにご存じの通り、単走や追走の勝敗を決める要素の一旦を担っています。
GNSS(GPSを含む世界各国で整備されている衛星測位システム)アンテナと、角速度センサー(ヨーレイトセンサー)をクルマに装着し、クルマの動き(ドリフト状態)を機械的に解析して得点をはじき出し、客観的な採点をするシステムです。
メリットは人間ジャッジの感情的な部分を排除した客観的な走りの評価が出せる点や判定基準の揺らぎを避けることができることです。デメリットは機械的なエラーが発生する可能性があるという点です。このDOSSについてくわしい説明をしていきたいと思います。
DOSSユニットとは…
連載1回目は車両側に装着するDOSSユニットを掘り下げて紹介していきたいと思います。車両側へ取り付けるDOSSユニットの構成は大きく分けて3つ。カーナビやスマホでもおなじみの位置情報を収集する「GNSSアンテナ」、GNSSアンテナから受信した位置情報を受け取る仕事を担いつつ角速度センサー(ヨーレイトセンサー)を搭載して角速度を計測している「本体ユニット」、本体ユニットで集めたデータを審判席にあるパソコンへ無線で飛ばす「シャークアンテナ無線機」です。それぞれがケーブルで繋がった一体型のユニットになっていて、練習走行が始まる前にDOSS運営スタッフが1台ずつ車両に装着していきます。
装着は車両側にあらかじめ用意されている「ブラケット」に本体ユニットを固定し、GNSSアンテナとシャークアンテナはルーフの外側にマグネットとガムテープを使用して固定します。また車両側にあらかじめ用意されている「電源ケーブル」に、本体ユニットから出ている「電源カプラー」を接続してDOSSに電源を供給しています。DOSSで使用する電源は車両電源を瞬断から防ぎ、競技途中のエンジン再始動があった場合でも良質な電力を得られる装置を介して計測に使用されます。これら車両にあらかじめ用意されている「ブラケット」と「電源ケーブル」は、D1グランプリのルールブック内にある車両規定で装備が義務づけられており、参加車両には必ず用意されています。
DOSS構成パーツ① GNSSアンテナ
次に大きく分けて3つあったDOSSユニットの構成をひとつずつ掘り下げていきます。まず「GNSSアンテナ」はカーナビのGPSアンテナと同じ役割で、アメリカが運用しているGPS衛星を含む世界各国の衛星測位システムの信号を受信し、常時10個以上の安定した信号を受信して極めて高精度な移動軌跡情報と計測時刻データを得るためのアンテナです。GNSS衛星からの電波をこの受信したデータの位置情報の変化と計測時刻から車速や加速度が算出でき、クルマがどのような動きをしているのかがわかります。
DOSS構成パーツ② 本体ユニット
次に「本体ユニット」ですが、こちらの中には角速度センサー(ヨーレイトセンサー)が入っていて、クルマが向きを変える時の「向きを変える速さ」を検出しています。この角速度センサーはクルマの角度自体も計測できますので、GNSSアンテナからの位置と時刻のデータと組み合わせることで、ドリフトのスピードや角度変化など、クルマのきめ細かな動きをすべて数値化できるのです。
DOSS構成パーツ③ シャークアンテナ
最後に「シャークアンテナ」の役割ですが、GNSSアンテナで受信した位置と時刻のデータ、本体ユニットの角速度センサーで受信したデータを、審査席のPCへ無線で飛ばすためのアンテナです。速度が出るコースだと200km/h近いスピードで走行している車両から無線でデータを飛ばしますので、DOSSのシステムの中でエラーを起こしやすい部分でもあります。このDOSSエラーについてはまた別の機会に詳しく説明したいと思います。