己の技術で資金力に立ち向かい「D1ライツ」を制した勝負師・米内寿斗が、愛機180SXと挑むD1GP頂点
目次
編集部への特別メッセージ
D1 GRAND PRIX 25周年、心よりお祝い申し上げます。
自分で言うのもなんなんですが、特に技術チームの皆さんと今でもピットで語り草になっているのが、2023年にD1ライツシリーズチャンピオンを獲得した際のマシンとデフを巡るエピソードです。
当時のD1ライツは、資金力のあるチームが素早いギア比変更を可能にする高級な「クイックチェンジデフ」を導入するのが主流となりつつありました。そんな中、私はただのプライベーター。高価なパーツを買い揃える余裕などありません。そこで私が選んだ戦術は、純正のデフ玉(ノーマルデフ)ベースで内部のファイナルギア比を変えたデフを自ら「6パターン」用意し、現場で組み替えて対応するという極めて泥臭い手法でした。
「金と道具に頼らず、知恵と腕と努力だけで勝つ」
重いデフケースを何度も自分で積み替えながら、クイックチェンジを搭載する裕福なチームと真っ向から勝負を挑みました。自力でビルドアップしたSRエンジン、Z33純正Hパターンミッション、そして6個のノーマルデフ。自らの手で組んだその180SXで見事にD1ライツの頂点を掴み取った瞬間は、私のドリフト人生における大きな誇りであり、今も人生を変えてくれた最高の記憶です。
D1GP技術チームのみなさんに、真のプライベーターとして、密かに応援していただきました。技術チームのみなさんは、デフを交換するたびにピットを訪れて安全確認とともに、その泥臭い作業を褒めていただきました。本当に嬉しかったです。
小学生の時に菅生で親父と見たD1GPから始まった私の夢は、学ドリや地方戦、そしてこのD1ライツ制覇を経て最高峰のD1GPへと繋がっています。自分を育ててくれた180SX、そして最高のチームとともに、D1GPシリーズチャンピオンという最大の目標に向かって走り続けます。
全日本プロドリフト選手権から始まったD1GP 25周年本当におめでとうございます。
米内寿斗

D1大好き少年と「シムドライバーの先駆け」
米内寿斗の原点は、画面の中のサーキットにあった。小学生の時に『グランツーリスモ』や『頭文字D』でクルマの魅力に取り憑かれ、菅生でD1GPを観戦したことで「D1GPドライバーになる」という明確な夢が定まる。
中学・高校時代は部活動(バドミントン)に打ち込みつつ、家ではハンドルコントローラーを装着して『グランツーリスモ』でひたすら走り込む日々。近年でこそ「eスポーツ/シム出身」のドライバーが脚光を浴びているが、米内はまさにその先駆者だった。18歳で初めて購入した愛車180SXで実車デビューを果たした際には、初走行から見事なマシンコントロールを披露してみせた。
タイトル総なめのステップアップと、大クラッシュからの壮絶な復活
山形大学・大学院時代に「学ドリ」で頂点を極めた米内は、社会人(NOK株式会社でオイルシールの設計・開発に従事)となってからも圧巻の勝負強さを発揮。2014年の地方戦シュートアウト全国1位をはじめ、D1地方戦EASTシリーズ2連覇(2015〜2016年)、D1東日本シリーズチャンピオン(2016年)、EDS(エビスドリフトシリーズ)6連覇(2017〜2022年)と、参戦した全カテゴリーでタイトルを獲得していく。
しかし、2020年のD1ライツ参戦時に最大の試練が訪れる。風間オートのS15シルビアで3戦連続優勝を果たしランキング首位を独走するも、最終戦直前の練習走行でまさかの大クラッシュを喫してしまう。満身創痍で挑んだ最終戦は無念の予選敗退。目前に迫っていた王座を逃す大きな失意を味わった。
だが米内は折れなかった。ワークスマシンの高次元な戦闘力を知ったからこそ、「生半可な仕様では勝てない」と痛感。自宅ガレージで2年の歳月を費やし、ボディからセッティングまで100%自身の手で仕上げた180SXを制作。前述の「ノーマルデフ6パターン作戦」という妥協なき努力を結実させ、2023年に有言実行でD1ライツシリーズチャンピオンの座を掴み取ったのだ。
刻まれた真価
2025年の充電を経て大幅刷新された800馬力OVERの2JZ・180SX
2024年から最高峰D1GPへ進出した米内は、2025年シーズンを休止し「D1GPで勝つためのマシンアップデート」へ全力を注いだ。Option本誌でも特集されたその最新仕様は、米内の技術的アプローチと熱意の結晶だ。
オートサービス森が手掛けた2JZ-GTE改3.4Lエンジンには、高回転での伸びとレスポンスを追求して大型のGCG G40-1150タービンを投入。課題であった吸気温度対策として大型インタークーラーやスノコE85/GTプラス燃料を採用し、800psオーバーのハイパワーと安定性を獲得した。
足回りもDOSS審査で求められる深い角度と追走でのコントロール性を向上させるため、スキットレーシング製車高調にフロントアングルキット、マックスドリフト製ドロップナックル、スキッドレーシング製アーム類を最適配置。初期ストロークの確保と限界域でのトラクションを高次元で融合させている。

最高の仲間、家族の支え、そして愛機180SXで目指すD1GP頂点
この最高峰の舞台を支えるチーム体制も米内ならではだ。黒田製作所の黒田監督、メインスポンサーのGYEONとの強い信頼のもと、ピットでマシンを支えるメカニック陣はかつてともに汗を流した大学自動車部時代の仲間たちが中心。パドック内でも屈指の若さとチームワークを誇る。
さらに、エビスサーキットの事務員でもある妻の深い理解とバックアップ、そして2歳半になる愛娘の存在が、米内がアクセルを踏み込む最大の原動力だ。
「ライバルや特定の意識する選手はいません。狙うのはただひとつ、D1GPのシリーズチャンピオンです」 初めて買ったあの日から一貫して乗り続けてきた愛車180SX。ノーマルデフでD1ライツを制した反骨心と技術力を武器に、米内寿斗はD1グランプリ最高峰の頂へ向かってフルスロットルで駆け抜ける。
【米内 寿斗 プロフィール】
| 名前: | Hisato Yonai 米内 寿斗 |
| 出身地: | 宮城県、仙台生まれ |
| 誕生日: | 1989年10月13日(36才) |
| 身長: | 173cm |
| 血液型: | O型 |
| 職歴: | NOK株式会社(自動車用オイルシールの設計・開発) |
| スポーツ歴: | 小学生時ドッジボール(キャプテン・全国大会出場) 中学高校バドミントン |
| 主な戦歴・ハイライト: | • 2013年:全日本学生ドリフト王座決定戦(学ドリ)シリーズチャンピオン • 2014年:D1地方戦シュートアウト優勝(全国1位) • 2015年:D1地方戦EASTシリーズ チャンピオン • 2016年:D1地方戦EASTシリーズ チャンピオン / D1東日本シリーズ チャンピオン • 2017〜2022年:EDS(エビスドリフトシリーズ)シリーズチャンピオン(6連覇) • 2023年:D1ライツシリーズ チャンピオン • 2024年〜: D1GP参戦 |
【2026年 D1GPマシンスペック】
| 車両名: | GYEON ORIGIN Labo. 180SX |
| ベース車両: | 日産 180SX(RPS13) |
| 搭載エンジン: | 2JZ-GTE改3.4L(オートサービス森 制作) |
| 最高出力: | 約800ps以上 |
| 過給機: | GCG G40-1150 タービン |
| 制御: | LINK ECU / ポッシュ・エレクトロニックプロジェクツ イグニッションコイル |
| 燃料: | 冷却: スノコE85+GTプラス ハーフミックス / KTDサージタンク / HPIラジエター&オイルクーラー |
| ミッション: | 6速シーケンシャルドグミッション / ブルドッグ クイックチェンジデフ |
| 足回り: | スキットレーシング車高調(F:15kg/mm R:7kg/mm) スキッドレーシング製フロントアングルキット マックスドリフト製リアドロップナックル スキッドレーシング製アーム類 |
| エアロ/ボディ: | オリジンラボ 風神ボディキット、CFラボ カーボンルーフ、GPスポーツ リアキャリパー |
| ホイール: | ワークエモーションCR Shigoku |
| タイヤ: | ハーソンタイヤ Dスモーク999 |

